作品記録

映画、音楽、小説について

映画「砂の器」について

 

 

おはようございます

 

 

今回は「砂の器」という映画について

話していこうと思います

 

 

 

まず簡単にこの作品の説明から

 

 

 

砂の器」という作品について

 

砂の器」とは松本清張の長編推理小説です

1960年から約一年間読売新聞に掲載されていました

その後1974年に松竹で映画化され

5度ほどテレビドラマ化されるなど人気の根強い作品です

また映画は様々な賞を受賞しており

現在ではブルーレイ化もされている

 

 

 

 

今回この映画について話していく前に

今公開しているわけではもちろんないですし

知らない方のためにもあらすじを簡潔に書いていきます

ネタバレな部分があるかもしれないので

嫌な方は是非観てから読んでください

 

 

ネタバレが構わない人のために

 

あらすじ

 

国電蒲田操車場にて男の死体が発見される

 

・前夜、蒲田駅付近のバーで被害者と連れが目撃されている

 

・被害者は「東北訛りのズーズー弁」を話しおり、二人は「カメダ」とよく言っていた

 

・ベテラン刑事の今西は若手刑事の吉村秋田県の「羽後亀田」に向かう

 

・情報は乏しかったが帰りの電車でピアニスト和賀英良と出会う

 

・被害者の養子の申し出で被害者の名前が「三木謙一」ということが判明

 

島根県出雲地方には東北弁と似たような訛りがあることが判明。また島根に「亀嵩」という駅を発見する

 

亀嵩に行くも、三木は好人物だという情報ばかりで重要な手がかりは見つからない

 

・捜査はいろんな手がかりをつかんでいくが決定的な情報がなかなか掴めない

 

・そんな中、「本浦秀夫」という人物に焦点があてられる

 

(過去へ)

・秀夫は石川県の寒村に生まれたが、父の千代吉が「ハンセン病」を患ったため母は出ていき、幼くして村を追い出されてしまう

 

・それから父の千代吉と秀夫の放浪の旅がはじまる。しかしどの村でもひどい扱いを受け殴られたり、石を投げつけられたりする。(下に詳しくあるが病気への差別のせいである)

 

・そして親子は亀嵩に到着する。当時巡査の三木に保護され、千代吉は療養所へ。秀夫は三木が保護し、養子として受け入れる

 

・しかし秀夫は三木の元から姿を消した

 

・大阪まで逃げた秀夫は働き、大阪が空襲の被害にあった際に戸籍が焼失したタイミングで「和賀英良」として名前を変える

 

(現在へ)

・和賀は「宿命」と名付けた自らのコンサートをする。

 

・警察本部では犯人が「和賀英良」だということで捜査会議で決定する

 

・コンサートで演奏中、今西と吉村が舞台袖にやってくる

 

・演奏を終えた和賀。そのあと字幕でハンセン病のことやメッセージが伝えられ終わり

 

 

 

以上であらすじです。

ざっくり紹介しましたが本来はもっと複雑なことが多くこれを読んだだけだと殺人の動機やなぜ「和賀は犯人だとわかったか」など様々な疑問がわいてくると思いますが、それは是非映画をご覧ください

 

 

 

 

感想に入る前に

ハンセン病について

書いていこうと思います

 

 

この映画において重要な要素である

このハンセン病は今はあまり知られていない

 

 

このハンセン病は感染病であり

症状は末梢神経障害と皮膚症状である

 

先に断っておくがハンセン病

現在では殆ど無いものといってもいい

稀に発症する場合があるが完治する病気である

 

 

この病気は古くからあり様々な地で

多くの人を困らせてきた

 

その為ハンセン病に対して

様々な見方をして間違った知識を

持ってしまうこともあった

 

 

砂の器」の中でも出てくるが

ハンセン病に対する問題は

「差別と偏見」である

 

 どこからその差別意識が生まれてくるのかというと

ハンセン病」は「前世の罪の報い」や「悪しき血筋」

からくる病気だといわれていた

現代ではなかなか考えにくいものだが

当時はそういった考えが少なからずあり

そういった差別や偏見から逃れたもしくは

復讐のような行き過ぎた気持ちから

新しい自分を守るため=過去を消すために

殺人を犯したのではないかと推測される

 

 

 

映画が公開された当時もかなりハンセン病への

理解は広まっていただろうし

医療技術も発達していただろう

しかし千代吉のような扱いを受けた

患者は過去に存在していたことは

事実変わりないと思われる

 

 

 

病気について知りたい方は

調べればかなり詳しく知ることができるので

ぜひ調べてみてください

 

 

この「砂の器」でえがかれている「ハンセン病」は

「差別や偏見」「悲しみや苦しみ」「孤独と絶望」

そういったイメージを持つようにできている

映画の物語のキーになってくる

 

 

 

 

 

話が長くなりましたが

ここで個人的な感想を述べていきます

 

 

 

・絵葉書と手紙

物語において重要なことではないのですが

手紙や絵葉書が登場します

現代ではかなり廃れていった文化ではないでしょうか

 

リアルタイムでない良さと形に残る良さ

この二つにおいて現代のSNSより長けている部分と思います

 

リアルタイムではないということは

その時のことを正確に伝えることは難しいでしょうが

その人の感じたことをより伝えることができると思います

またその一つのメッセージが練られたものになるし

より「相手に伝える」という意識が強く

なるでしょう

 

簡単に伝わらないうえに手間のかかること

そこまでして伝えるというなかに

人の思いは強く宿り意味のあるものになるでしょう

 

この二つをピックアップしただけで

もっとたくさんの素敵なものがあったのですが

要は「アナログ」ということ

そしてそれは「つながりの深さ」を表していると思いました

 

捜査でもなかなか手こずる場面がありましたが

人と人のつながりはなかなか切れるものではなく

そこから事件が紐解かれたように

人と人のつながりがこの映画の言う「宿命」のような

そんな気がしました

 

本来出会うはずのない人間と出会うはずもなく

また切れるはずの縁は切れていく

 

そうして残ったつながりこそが「宿命」に

つながるのかなと思いました

 

 

 

・色と景色

きれいなシーンが多いように感じました

親子の旅の様々な四季

田舎の街並み

当時としては当たり前なのかもしれませんが

今のように景色はごちゃごちゃしていません

むしろ都会も質素なくらい単調な色味のように感じました

 

そして砂の器を作るシーンその始まりは

後でどういうシーンかわかるわけですが

水の反射や子供の影、夕日どれもきれいで印象的なシーンでした

色味は特になく橙のような感じなのですが

あそこだけを見れば子供が海辺で遊んでいる

そんなに悲しいシーンではないはずなのですが

なにか思いつめた儚いようなさみしいような

そんな気持ちにさせられてしまいます

間違いなく名シーンです

 

しかしこの映画にはもう一つ好きなシーンがあって

和賀が浮気相手の紙吹雪の女から電話があり

車で駆け付け二人で夜の街を走るシーン

 

赤いライト、白いライト、夜の黒

いいコントラストですがそれ以上に

「行く人と帰る人」という風に感じました

 

あそこのシーンで和賀はまた一つのつながりを断つわけですが

これも一つの宿命のような気がしました

生きていくために愛した女を選んだ和賀の決意

 

そのあと赤い血を流す女は白いライトに照らされる

和賀だけではなく皆が宿命を抱えているというそういう風にも

とれるすごく印象的なシーンでした

 

 

 

・「宿命」

これぞこの映画のテーマですが

「なぜ生まれてきたのか」

「なぜ生きていくのか」

様々な問いを宿命と呼んでいます

 

そしてその答えを探すコンサートを開く

 

三木を殺した和賀はその答えを知りたくて

もしくは答え合わせのような考えで

この宿命を演奏したのかもしれません

 

この映画の最後はスラムダンクの山王戦を思い出させる

音楽「宿命」が流れそして和賀の人生が巡っていく

鬼気迫る演奏で悲しみや苦しみがすさまじくその中に

少し懐かしむような思いもありました

 

和賀は過去の自分を何とかして捨てようともがきましたが

一番過去に執着していたのは間違いなく和賀でした

 

その執着も捨てたいという気持ちも

すべては父への愛だったのではないかと思います

 

たくさんのつらい思いをしたが

父への愛は変わらなかったそんな和賀は

音楽をしているときにしか父に会えなかったと

そんな悲しい和賀の宿命こそつながりだったと私は思いました

 

このラスト30分くらいを作ったのはすごすぎる

 

映像、音楽、物語、演技すべてが完璧だったと思いました

原作の小説では感動要素はそんなにないらしいですが

映画はこの父子の愛に着目して描いたのが

間違いなくヒットの理由だったと思いました

 

 

 

 

・まとめ

今回は冷静に見てられず客観的に映画を分析できず

単純に感動していました

 

これを読む人がどれだけこの映画を知っているか

わかりませんが見ていないとあまりわからないかもなんで

ぜひ見てみてください

 

昔の映画が苦手な方でも

最初の一時間を耐えれば大丈夫なので

 

感動はしますがそれ以上に考えさせられる映画

自分の人生にズドンと突っ込まれるようなそんな

作品なので語りがいのある作品だと思います

 

 

長くなりましたが

以上です

 

読んでくださってありがとうございました